透明感溢れる描写が魅力の辻村深月|DVD・CDの買取は中古じゃぱん

青空と逃げる

事故を起こし、失踪した夫。それをきっかけに、世間から追われることになってしまった母と子の物語です。

夫が、人気女優との深夜のドライブ中に事故を起こした……一体、夫は人気女優とどんな関係にあったのか？　なぜ、深夜に運転をしていたのか？

物語のきっかけはミステリー小説の定番とも言える悲劇から始まりますが、その後、様々な困難に立ち向かい、苦しみながらもたくましく逃亡生活をし続ける母親と息子の描写に唸らされます。ふたりの視点を交互に行き交いながら進んでいく物語の、意外な結末とは？

辻村深月作品はどれもそうですが、この『青空と逃げる』というタイトルも素敵だと思います。

凍りのくじら

主人公の高校生・理帆子は、頭が良くて、器量も良く、誰とでもうまくやっていけるような女の子でした。ただ、本人はいつも周りを冷めた目で見ていて、ちょっと見下しているところがあります。

そんな彼女はある日、母親の入院している病院で、別所あきらという人物に出会います。「写真のモデルをやって欲しい」と頼まれ、一旦は断る理帆子ですが……

一癖あるヒロインなので、最初は読み進めるのが苦痛に思う人もいるかもしれません。ですが、徐々に明かされていく彼女の内面に、共感する人も多いはず。

1度だけではなく、2度、3度と読み返すことで、どんどん味わい深くなる作品です。

パッとしない子

『パッとしない子』は初めのうちは小学校の先生と、今は売れっ子アイドルになったかつての教え子の懐かしい再会……かと思いきや、後半、まったく違う表情を見せてきます。

短編の中にも、ドキッとしてしまう毒を織り交ぜてくれる辻村深月。自分の言葉が、思いがけない受け取られ方をしてしまう。

いかにも身近にあり得そうで、ぞくりとしてしまう作品です。

かがみの孤城

ある事件がきっかけで、不登校になってしまった中学1年生のヒロイン・こころ。ところが、ある日突然、自室の鏡が光り出し、伸ばした手がそのまま引き込まれ、気がつくと、こころはあるお城の中にいました。

そして、そこにはこころだけではなく、同じようにお城に迷い込んだ子供達がいたのです。

学校に苦痛を覚える女の子が、鏡から異世界へ足を踏み入れる──

というあらすじは、梨木香歩の『裏庭』を思い出します。ただ、今作品では異世界に誘い込まれた子供達が複数人登場し、毎日17時までに元いた世界に帰らないと狼に食べられてしまうルールや、「『鍵』を見つけることができた一人の願いを叶える」という設定が、よりミステリー的な色を深めています。

一体、このお城はなんなのか？　願いを叶えるのは誰になるのか？　そして、こころたちが選ばれた理由とは、一体、なんなのでしょうか？

スロウハイツの神様

『凍りのくじら』と同じく、辻村深月ファンの中でも、1,2を争う人気作品です。劇団キャラメルボックスによる舞台化もされました。

主人公のチヨダ・コーキは人気作家でしたが、彼の作品を元にした殺人ゲームが起きてしまったところから、物語は始まります。

一旦は執筆を続けられなくなってしまうものの、10年後、事件から復活したコーキ。

そして、そんな折、勝気な人気脚本家・赤羽環から「スロウハイツ」への入居を誘われるのですが……。

本作の魅力は、何と言ってもキャラクター。スロウハイツの住民たち、それぞれにさりげなく張り巡らされた伏線が、後半、「まさか！」と思う形で明らかになっていく展開は圧巻です。そのため、上巻は焦らされているような感覚を覚える人もいるかもしれませんが、ぜひ、下巻まで一気読みして欲しいです！